
前置胎盤疑い!(1)

胎盤が正常より低い位置(子宮口に近いところ)に
付着してしまい、
内子宮口の一部・・・または全部を覆っている状態を
「前置胎盤」といいます。
通常は、
赤ちゃん→胎盤
の順番で産道を通って出てきますが、
前置胎盤では
胎盤が赤ちゃんより下側にあり出口を防いでしまうため
どうあがいても出られません!
なので、前置胎盤と診断されると
100%帝王切開になります。
前置胎盤の原因はよくわかっていませんが、
リスクとしては
・高齢妊娠
・喫煙
・多産婦
・多胎
・不妊治療
・以前に子宮の手術を受けた(帝王切開・流産・中絶・子宮筋腫など)
わたしは、
流産の手術を複数回経験しています。
それプラス、高齢妊娠、多産婦であることが
当てはまります。
6項目中の半分
前置胎盤になりやすいリスクが
揃っちゃっているんですよね~。(^◇^;)
なぜ高齢妊娠だと
前置胎盤になりやすいのでしょう。
子宮の内膜が加齢にともなって柔軟性を失い、
硬く薄くなっていて
受精卵が子宮の高い位置(ベストな場所)にうまく着床できず
ズリズリとずり落ちながら低い位置(子宮口付近)で
ようやく着床する、
ということがあるからです。
また多産であっても
子宮内膜が度重なる妊娠出産で
疲労困憊しているために
上記と同じくベストな位置での着床が難しく、
〝ずり落ち着床〟(勝手に命名)が起きやすい・・・。
産婦人科領域の手術後も
内膜が切除され薄く弱くなっているので
着床しづらいです。
とくに、帝王切開後の妊娠では
前置胎盤が起きやすいことが知られています。
帝王切開の回数が多ければ多いほど
前置胎盤のリスクは急上昇します。
そういうこともあって、
日本では「帝王切開は3回まで」と
言われているんですね。
前置胎盤で怖いのは
妊娠28w以降に、いきなりの大出血!!
『警告出血』といいますが、
内子宮口あたりの胎盤の一部が
剥がれてしまうことによる性器出血です。
出血量が少なければ絶対安静で様子をみますが
出血量が多い場合は
胎児への血液循環が低下して危険な状態になるため
早産時期であれ、緊急帝王切開になります。
予期せぬ自宅での出血が一番こわいので
そうならないように
31w末までに前置胎盤の有無をエコーで評価し、
もしそうだと診断されたら
出血させないように、
おなかが張らないように
できるだけ安静に過ごす必要が出てきます。
状況によっては
少し早めに管理入院として
帝王切開に備えます。
妊娠初期に、受精卵が着床した場所で
胎盤が形成されていくのですが
子宮の上のほう(子宮体)は
内膜が厚いですが
子宮の下のほう(子宮下狭部)は
内膜がもともと薄いので
前置胎盤では胎盤ができるときに
血管が子宮内膜を乗り越えて、
子宮の筋層奥深くまでがっちりと潜り込んでしまう
「癒着胎盤」も併発しやすいです。
前置胎盤はエコーで診断できますが
癒着胎盤はエコーではわからず、
分娩してみて
行き当たりばったりで、そのときになって
「胎盤が剥がれないぞ!
たいへんだ、癒着胎盤だ!」
とわかります。
前置胎盤のうち10%ぐらいが癒着胎盤に
なってしまうと言われていて
通常、胎盤は赤ちゃんが出た後に
自然に子宮から剥がれて外に出てきますが
癒着胎盤では子宮の筋層までがっちりと
くっついてしまい簡単には剥がれません。
放っておくと、くっついた胎盤がじゃまして
子宮が収縮できなくなります。
つまり、出血が止まらなくなって
母体の生命の危機に直面することに!
胎盤用手剥離といって
手で無理やり癒着胎盤を剥がす手術もありますが、
なにせ出血量がハンパなくなるので
産科手術の中でもかなり緊張が走る
難しい手術だと思います。
もたもたやってる間に
大出血で手遅れになるリスクがあるため
どうしても剥離できないときは
帝王切開のあと、子宮ごと摘出することも
選択されます。
ということで、
前置胎盤は、ただ帝王切開すりゃ大丈夫〜って
ことでもなく、
出血のリスクが免れないため
あらかじめ妊娠後期から自己血を貯めて
輸血に備えるといった準備も行われます。
だけど、妊娠中期までは
「胎盤の位置が低めだね~」
ということはよくあります。
完全に内子宮口を覆っている前置胎盤でないかぎり
妊娠が進み子宮が大きくなると徐々に
胎盤が子宮口から離れていって
最終的には好ましい胎盤の位置に落ち着くことが
ほとんどだし
わたしも11回の妊娠で3回ぐらいが
このパターンでした。
今回、12人目でも
妊娠中期に「胎盤低めかな~」と言われましたが
まぁいつもことやなー
そのうち上がってくるやろ
と深く考えずいたのですが
妊娠後期になっても
「うーん・・・
胎盤やっぱり低いな・・・」
32wを過ぎて胎盤が上がっていくのは
あまり期待できないので
ここに来てようやく、
現実に目を向けることになりました。
エコーで診た感じ、
内子宮口から胎盤の端っこまでの
距離は2cmぐらいはあるように見える・・・
だとすると、前置胎盤ではなく
正常よりも位置が低いだけの低置胎盤って
評価になります。
だけど、エコーのプローブの角度を少し
変えてみると、見方によっては
一部、胎盤辺縁が内子宮口にかかっているようにも
見えなくもない・・・?
カラードップラーで血液の流れを診ると
内子宮口あたりにやたらと豊富な
血流像があって、
「それが何を意味するのか」
胎盤が子宮の前壁(妊婦のおなか側)に
付着しているときは
エコーで診やすいのですが
後壁(妊婦の背中側)付着のときは
そもそも診にくい・・・というのもあり、
う~~~~~~~ん・・・
この血流をどう評価するか・・・・(;´д`)
主治医も頭を悩ましていました。
通常、臍帯は胎盤実質の中央に付着しますが
低い胎盤の辺縁から臍帯が出ていて
内子宮口あたりに臍帯があって、
血流が豊富に見えているということなのか?
それとも
臍帯が胎盤実質ではなく卵膜に付着していて、
赤ちゃんの頭の上に、内子宮口を覆うように
臍帯が位置する『前置血管』なのか?
前置血管は、臍帯血管を覆うプニプニした
こんにゃくみたいな物質が欠けて、
血管実質が羊水中に剥き出しの状態で浮遊するので
妊娠後期に頻繁におなかが張ったり
もしくは陣痛が始まることで
臍帯血管が圧迫を受けて破れたり切れたり
する可能性があり、とても危険です。
臍帯血管破損が起きれば、
それはつまり、胎児への栄養と酸素供給が
ストップすることを意味し、
生死を左右する事態です。
なので、自然にお産hが始まる前に、
早めに(35w~37wぐらいが妥当かな)
帝王切開が選択されます。
かといって、あまり早く帝王切開すると
赤ちゃんはまだ未熟だし、
ギリギリまでねばっていて
陣痛が始まったり、出血してからでは
遅い・・・
そのあたりの
サジ加減がめっちゃ難しいんです!
31w健診で、主治医だけでは判断つかず、
32wに複数の産科医の目でエコー所見をカンファレンス、
「さぁみんなで考えよう!」
評価してもらうことになりました。
・前置胎盤ではなさそうに見えるけど
低いことには違いない。
・臍帯卵膜付着や前置血管では
なさそうな所見だが、
内子宮内あたりの豊富な血流は
やはり気になる。
・どっちにしても、経膣分娩は厳しいかも
しれない。
・帝王切開にしたところで
子宮下部は収縮しにくく、出血多量になることが
想定される。
・さらに12人目の多産、高齢。
産後すぐの弛緩出血のリスクも考慮すると・・・
・輸血想定、
自己血貯血対応の高次元医療施設転院での分娩が
計画分娩が好ましい
今回の妊娠、
なんと4回目の転院ですよ。笑
最終的に沖縄でもっとも高度な医療を誇る
大病院に行くことに。
ついこないだ、
妊娠糖尿病疑惑で検査を受け
疑いが晴れたのも束の間、
間髪いれず
今度は胎盤付着位置問題勃発ですかー!
あ~46歳の妊娠って、
こーゆうことなのね・・・(ToT)
妊娠出産は
本当に何が起こるかわかりません。
12回目の妊娠。
母子ともに安全にお産を
終えることが当たり前ではないという事実を
改めて突きつけられています。
と、同時に
助産師としての妊娠出産に対する倫理観や認識が
まだまだ甘く、過信していた自分にも
気づかされたのでした。
すべての妊娠において
科学的根拠に基づいて多方面から
冷静かつ的確なアセスメントができないといけないし、
もっと予測的危機管理意識を
持っておかないと。
自然分娩とかバースプランとか
自主的なお産だとか。
「妊娠は病気じゃない」
「産み方は生き方である」
考え方によっちゃそうなんだけど。
それもわかるんだけど。
医療介入に嫌悪感を抱き、
「自然こそが女性の権利だ!」
という先入観や思い込みだけで
妊娠出産をとらえることがいかに危険なのか・・
そんな大切な気づきを与えられている
今回の妊娠です。
つづく





