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2022.12.17

流産死産したママ・家族へ助産師ができること(後編)

赤ちゃんを亡くされたママの身体的反応、
そして心は本当にデリケートです。

大切な人を失ったときに起こる
身体上・精神上の変化を医学用語で
『グリーフ』といいます。

とんでもなく悲しいことが起きた時、
夢なのか現実なのかわからない、
というパニック状態から始まって、

悲しみ、怒り、否定、
信じたくない、嘘に決まってる!
わたしが悪かったのだろうか・・・
現実を受け入れられない気持ちを経て

時間をかけて
前を向いて歩んでいけるようになります。

グリーフには段階があって、

1)回避のフェーズ(喪失を否定)
2)同化のフェーズ(喪失を受容)
3)適応のフェーズ(生活再適応)

医療者のちょっとした態度、言動ひとつによって
悲しみを受容していく最初の1)のステップに
ブレーキをかけてしまえば
自責感、後悔、罪悪感、孤独がトラウマになり、
2)のフェーズに進めなくなってしまいます。

〝あなたの悲しい体験を直視させてください。
ごまかしたり逃げたりしません。
辛く苦しい気持ちを共有させてください〟

傾聴に徹するとき、
相手の目をまっすぐに見つめ決してそらさないことは
その意識の表れです。

命、生きること、死ぬこと。
なぜ神様はこんなに辛い試練を与えるのか?
当事者は、根源的で宗教的、
スピリチュアルなことも深く考えます。

亡くなった赤ちゃんが
「私のところにきた意味」を探すのです。

答えは見つからなくても
ひたすら寄り添い、耳を傾けます。

助産院ばぶばぶでは、
亡くなった赤ちゃんの母子手帳、
お写真があれば見せてもらうようにしています。

写真を見ながら、
ママと一緒に、

「鼻が高いね」
「なかなかの美人だね!」
「肌が透き通っていて赤くてキレイ。だから赤ちゃんって言うんだよ」
「お棺には何を入れてあげたの?」

などなど、赤ちゃんのことをたくさん話します。
すると必ず、彼女たちはボロボロ泣きながらも
とても美しい笑顔を見せてくれます。

悲しまないように努力しなくてもいい。
元気になろうとがんばらなくてもいい。
無理に忘れる必要などないのです。

悲しい経験をしたママたちに必要なのは
助言や励ましではないと思うんですよね・・・。

ただ静かに、
沸き上がってくる言葉に耳を傾け、
気持ちに寄り添ってもらえる場所を
求めていらっしゃるのだと思います。

悲しみが癒されるまでの過程は
ひとりひとり違いますが

心の蓋をせずに、
たくさん泣いて、悲しんで
おなかにいた赤ちゃんのことを
繰り返し繰り返し想ってあげること。

そのときどきの想いを
誰かとじっくり共有できることが心の負担を
軽くしてくれる鍵となります。

また、悲しみのどん底にいる当事者は
ずっとこれから先も、この深く暗い場所で
もがき苦しみ続けなければならないのだろうかと
不安を抱えています。

亡くなった赤ちゃんのことを想うと
自分が幸せになってはいけない、
他の楽しいことを見つけることに
罪悪感を持ってしまうことも少なくありません。

亡くなった赤ちゃんと、
生きている子どもたちの間で
愛情のバランスを取ることが難しくなり、
産後うつや育児困難を抱え、さらなる孤立を
まねく場合も珍しくありません。

前回のブログでご紹介させていただいた
胎児水腫により妊娠継続を中断したママは、
上の子たちのことをとても愛していて、
亡くなった赤ちゃんのことも
同じように愛していたはずなのに、
人工妊娠中絶してしまった自分の気持ちが
わからなくなっておられました。

正解のない中での精一杯の選択だったとしても、
深すぎる罪悪感を抱えて
「愛情」という感情に混乱をきたし
助けてほしい、怖くてたまらない
と震えておられました。

医療者が何か助言をするとしたら、

流産や死産のあとの体の回復、
そして心の変化、悲しみが癒される過程を
丁寧に説明することではないでしょうか。

今、渦巻いている悲しみ、怒り、憂うつ、不安、、無力感、
自責感、罪悪感などの感情は、
自然な回復への正常な過程であることを伝え、
理解してもらうことで
悲しいながらに一滴の安心感を与えることができます。

いつか、今抱えている悲しみより
ずっとずっと大きな温もりと愛情を持って
あのときの赤ちゃんのことを
穏やかに話せるようになる日が来るという見通し、
希望をそっと伝えてあげるだけで十分だと
わたしは思っています。

また、悲しんでいるのは流産・死産を経験した
当事者だけではありません。

パパも
ママと同じように心に傷を負い、
深い悲しみの中にいます。

周囲からは
「傷ついた妻を支えてあげて」と期待され、
妻の心、そして生活を支えるために
悲しみの中で立ち止まるわけにもいかなくなります。

淡々とすべきことをこなしていく中で、
彼らは自分の心のケアが
置き去りになってしまうことがあります。

そもそも、女性に比べると
男性は感情を表に出さない傾向があります。

その態度が、
悲観体験の真っ只中にいるママから見ると
パパがまるで悲しんでいないかのように
見えてしまいます。

自分の気持ちと彼の気持ちとの温度差に
孤独感は増すばかりです。

男女の気持ちのボタンの掛け違いから
誤解やすれ違いをもたらし、
ときに夫婦関係に亀裂を走らせ
危機的状況に発展するケースもあります。

流産・死産という悲しい出来事が
2人を引き離す致命的なことにならないよう、
せめて、絆を深めるきっかけとなるように・・・

パパママの
十分なコミュニケーションがとれているかどうか。
そして、2人の心の温度差はどうか?

夫婦関係については、
とてもプライベートな部分ですが
赤ちゃんを亡くしたママだけでなく
パパ、そして上の子の精神的な支えも
必要だと考えます。

丁寧な聴き取りをしながら
男女の感じ方や悲しみの表現方法の差の理解などを
じっくりと伝えていきます。

当事者とその家族が心を開き、
聴いてもらいたい、話したいと思えるような
医療者の関わり方は必須でしょう。

ですが残念ながら
流産・死産にともなう心のケアは
今の日本の周産期医療では
まだあまり認知されていないか、
過小評価されていて、十分に機能していないような
段階であると感じます。

赤ちゃんを失うという出来事は
想像を絶する大きな喪失であり、
決して軽視すべきことではないはずなのに。

厚生労働省が展開している
赤ちゃんが産まれた家庭への全戸訪問事業や
産後ケア事業を受けることさえもできず、
流産、死産のママは、産後の支援から
抜け落ちてしまっている現状があります。

臨床現場では、日々の業務に忙殺され、
じっくりと赤ちゃんを亡くしたご家族に寄り添うことは
難しいかもしれません。

それでも、
医療現場、そして地域へと
流産・死産など悲しい経験をした人たちが、
素直な感情をありのままに表出できるように、
丁寧に接し、支えていく場所を確保し

なにより、退院後にどこに助けを求めたらいいのか
すべての当事者へケアの情報が周知されるような
システムを充実させてていくことが
わたしたち医療者の大切な使命であり、
これからの課題だと考えています。

「助産師さんが亡くなった赤ちゃんをかわいいと
言ってくれた」

「亡くなった赤ちゃんをとても丁寧に扱ってくれた」

「助産師さんが一緒に泣いてくれて
それがとても嬉しかった」

大きな悲しみのなかに
ぽっかりと浮かぶ小さな陽だまりのような
当事者と、その家族の声を
もっともっと増やせるように

地域で活動する助産師として
日々研鑽していきたいと思っています。

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