
切迫早産の最新治療(1)子宮収縮剤は48時間限定投与

「妊娠何週で生まれたのか」
それが新生児死亡や脳性麻痺などの
周産期予後と密接に関連することが
知られています。
早産経験者は
身近にも案外たくさんいて、
すべての女性にとって
他人事ではないと思い知らされます。
そして早産を防ぐことは
周産期医療にとって
最も重要な課題のひとつです。
切迫早産の定義とは
妊娠22w〜36wに
規則的な子宮収縮が認められ
かつ子宮口の開大
または頸管長の短縮があり
早産の危険性が高いと考えられる状態
を言います。
切迫早産の異常な子宮収縮に対して
ウテメリンやリトドリン、マグセントなどの
子宮収縮抑制薬を用いた治療が
広く行われています。
軽度の場合は内服。
重度の場合は入院して
点滴で薬剤を投与するのが一般的です。
日本では
子宮収縮が抑えられた後も,
再発を防ぐ目的で予防的に
子宮収縮抑制剤投与を続けることが多く
長ければ2ヶ月、3ヶ月という
長期間の入院が必要になることも
珍しくありません。
子宮収縮抑制剤を使用すること自体は
どこの国でも共通なのですが、
実は、薬剤の〝使い方〟が
欧米と日本とでは大きく異なります。
『子宮収縮抑制剤の効果は
48時間に限られる』
『長期間の子宮収縮抑制剤投与で
早産を防ぐ効果は上がらない』
というエビデンスに基づき
欧米では赤ちゃんの成熟を促す
ステロイドを投与しつつ
効果が発現するまでの48時間のみ
期間限定で子宮収縮抑制薬を点滴投与する
治療法が主流。
実際に、長期入院薬剤投与と
48時間限定薬剤投与の
切迫早産妊婦のその後を比較したところ
平均分娩週数は38wで差はなく、
37w未満の早産数、
28w未満の早産数、
どちらも差は認められなかった、
という報告でした。
また、NICU(新生児集中治療室)の
入院数にも差は認められませんでした。
そこで問題提起です!
現在の日本が行っている
切迫早産における長期入院、予防的長期点滴は
医学的に本当に必要なのでしょうか。
早産予防のための
長期にわたるベッド上治療の弊害は
血栓塞栓症、骨量の低下、心臓血管や
筋肉の機能低下
家族や社会からの疎外感による
不安、抑うつ、気分不快、ストレスなど
さまざまな身体的、精神的問題が
あることが報告されています。
保守的で慎重な日本人。
丁寧すぎるほど手厚い切迫早産への
長期薬剤投与が継続されていることは
妊婦さんの精神的安心感を得られる
メリットがありますが
それとは真逆の精神的ストレスにも
通じるという皮肉な現実があります。
『どの視点から
どのように切迫早産をとらえるか?』
によって、
ベターとされる治療法も変化するのかも
しれませんね。
切迫早産と診断された妊婦に
子宮収縮抑制薬を長期投与しない
治療管理法については
一部の病院で日本でも欧米方式が
導入され始めています。
いくら信憑性のあるエビデンスが
存在しているとしても
古来からの慣習的方法を
急に変更することは精神論的な観点から見ると
そう簡単なことではない、という側面も
理解できなくはないですし、
だからこそ、
難しい問題なんだろうなぁと
思います。
利便性と精神論、
両方のバランスを考慮しつつ
そろそろ日本も
世界が示すエビデンスに基づいて
古来からの治療法を
再検討すべき段階に来ているのではないか
と思います。
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